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ぶっ飛び力学研究所BUTTOBI RIKIGAKU LABORATORY

METHODぶっ飛び力学

飛距離を決めているのは、センスではなく力学である。

ぶっ飛び力学とは、飛距離を「エネルギーの伝達効率」として扱う体系です。 以下は、当研究所のすべての指導が演繹される10の原理。 レッスンの現場で使っている前提を、そのまま公開しています。

FIG. 01 KINEMATIC SEQUENCE

まず、順番を見る。

解析で最初に確認するのは、切り返しの順番(トランジションオーダー)です。 骨盤 → 胸 → 腕 → クラブ の 1-2-3-4 が理想。ここが崩れている状態で、他の数値を触ることはありません。

TABLE 00 — トランジションオーダーの読み方
表記意味判定
1-2-3-4骨盤 → 胸 → 腕 → クラブ理想
3-2-1-4腕 → 胸 → 骨盤 → クラブ上半身始動
1-2-2-4胸と腕が同時に動いている分離不足
FIG. 01 — 各パーツの角速度。ピークが左から順に立ち上がり、前のパーツが減速しながら次へエネルギーを渡す。

PRINCIPLES 10の原理

01ENERGY

飛距離とは、クラブに与えたエネルギーの総量である。

仕事=力×距離。ヘッドスピードは、この掛け算の合計としてしか生まれません。 「速く振ろう」という意識でヘッドスピードが上がらないのは、速度は原因ではなく結果だからです。

Sasho MacKenzie の研究では、クラブに伝わるエネルギーは4つの要素に分解されます。 そのうちヘッドスピードの個人差を最も説明したのは、グリップを軌道に沿って引っ張り続ける力でした。

TABLE 01 — クラブに伝わるエネルギーの4要素
要素内容ヘッドスピードへの寄与
ハンドパスに沿った平均フォースグリップを軌道に沿って引っ張り続ける力個人差の約92%
ハンドパスの長さトップからインパクトまで手が移動した軌跡次いで大きい
クラブの回転量(タメ)いわゆるコックの深さ相関はほぼない
回転軸に対するトルク手首のリリースによる回転力相関はほぼない

出典: Sasho MacKenzie「How Amateur Golfers Deliver Energy to the Driver」

02GROUND REACTION FORCE

引く力の正体は、腕力ではなく地面反力である。

空中にあるグリップを強く引くには、体はどこかを押し返さなければなりません。 ゴルファーが押し返せる接触点は、足の裏と地面だけです。 つまり「グリップを強く引く」とは「地面を強く踏む」ことと同義です。

地面反力は1本の矢印ではなく、横(ホリゾンタル)・回転(トルク)・縦(バーティカル)の3方向の合成です。 そしてこの3つにはピークを迎える順序があります

TABLE 02 — 地面反力3ベクトルとピーク位置
ベクトル生み出すものピーク位置
横(ホリゾンタル)左右への移動トップ到達の前
回転(トルク)骨盤の回転左腕が地面と平行
縦(バーティカル)爆発的なヘッドスピードシャフトが地面と平行

「地面を蹴れば飛ぶ」という単純化が危険なのは、3つのうち縦しか見ていないからです。 順序が1つズレると、以降がドミノ倒しで遅れます。アーリーリリースや振り遅れの多くはここに原因があります。

03KINETICS → KINEMATICS

見えない「力」が先で、見える「形」は後にできる。

カメラに映るのは形(キネマティクス)です。しかし形を作っているのは、 外からは見えない筋出力と足裏の圧力(キネティクス)です。

プロの形を真似てもうまくいかないのは、見えない力のかけ方を真似できていないからです。

だから当研究所は、フォームを直接いじりません。 力のかけ方が変われば、形は結果として変わります。順番を逆にすると、 見た目だけ似た代償動作が積み上がります。

04FOUR AXES

力の効かせ方には4つの評価軸があり、優先順位は固定されている。

動作の改善は、必ずこの順で確認します。順番を飛ばして「力の大きさ」から触ることはありません。

  1. TIMINGいつ起こるのか

    3ベクトルのピーク位置。ここが狂った状態で他を練習しても直りません。

  2. APPLICATIONどこに力をかけるか

    縦に蹴るなら母指球。踵に乗ったまま高く跳べる人間はいません。

  3. MAGNITUDE力の大きさ

    PGAの飛ばし屋は垂直方向に体重の約2倍以上を地面へ叩きつけています。

  4. DURATION圧をかける時間

    力積=力×時間。一瞬の力みではなく、早く立ち上げて長くかけ続けることが効きます。

ピーク値の高さより、力積(インパルス)のほうが速度に直結する場面があります。 短い滑走路で止まるには強烈なブレーキが要りますが、長い滑走路があれば最大出力がなくても止まれる。これと同じです。

05KINEMATIC SEQUENCE

エネルギーは、減速することで次のパーツへ渡る。

骨盤 → 胸郭 → 腕 → クラブ。各パーツはこの順に動き出し、この順に最高速度へ達します。 そして前のパーツが減速した反動で、エネルギーが次へ移ります。 急ブレーキをかけた車の後部座席で、荷物が前へ飛ぶのと同じです。

重要な但し書きがあります。この減速は意識してかけるものではありません。 「左の壁を作ろう」と回転を意識的に止めると、スイングは壊れます。 エネルギーが次へ移った結果として、自動的にかかるものです。

飛ばし屋は、クラブがトップに到達する前に下半身の仕事を終えています。 だからこそ捻転差が生まれる。トップに到達してから下半身を動かすアマチュアは、 土台からの伝達が遅れ、腕で振り下ろすしかなくなります。

06UNDERACTUATED JOINT

手首は動力源ではなく、受動的に動く関節である。

肩からグリップまでが第1の振り子、グリップからヘッドまでが第2の振り子。その蝶番が手首です。 手首は自前のモーターを持たない劣駆動関節として扱うべきものです。

ここに一見矛盾するデータがあります。手首のタメが生むエネルギーは全体の28%に過ぎない。 しかし308人を解析した研究(Chu et al., 2010)では、 ヘッドスピードが速い人ほど深く鋭い手首の角度を保っていました。

タメはエネルギーの発生源ではなく、慣性モーメントを下げてハンドスピードを上げる装置。 つまり作るものではなく、正しく引いた結果として生まれる現象です。
07COM / COP

重心と圧力中心は、動作中に分離させる。

重心(CoM)は体全体の質量の中心、圧力中心(CoP)は足裏から地面に加わる圧力の中心。 静止時は一致しますが、動作中は別方向へ動くのが正解です。

PGAツアー選手のデータでは、ダウンスイング初期に重心の大半はすでにターゲット側へ移っているのに、 圧力はまだ80%が右足に残っています。 「右から左へ体重移動しろ」に従って質量と圧力を一緒に動かすのは、ただのスウェーです。

08UNWEIGHTING

アクセルは抜重、ブレーキは逆トルク。どちらも自分でかけにいかない。

飛ばし屋は、重心と地面反力の間に約26cmのモーメントアームを作ります。 この瞬間、垂直方向の力は体重の65%しかありません。つまり自分を一瞬浮かせている。 重いドアもノブ側を押せば軽く開く。力そのものではなく、距離を伸ばすのが正解です。

そして減速(ブレーキ)もまた、意識的にかけるものではありません。 抜重した後に左足を踏むことで、圧力の移行にともない自動的に生まれます。

09INDIVIDUALITY

万人共通のスイングは存在しない。タテとヨコ、2つのエンジン。

骨格も筋のつき方も違う以上、得意なエンジンは人によって違います。 バスケットボールのジャンプのように真下に踏んで跳ねるタテ型と、 ハンマー投げのように回転するヨコ型。プロのスイングもこの配合の違いです。

禁忌は、自分の軌道と違うエンジンを吹かすこと。 完全なヨコ型のコリン・モリカワが、ドラコン王者の「前後に揺らすトリガー(タテ)」を試したところ、 スピードはむしろ落ち、チーピンが止まらなくなりました。

基準値は共通。処方は個別。この2つを混同しないことが、当研究所の運用ルールです。
10REPEATABILITY

再現性とは、同じ形ではなく同じ結果を出せることである。

熟練の鍛冶職人はほぼ同じ場所にハンマーを打ち込みますが、 肩・肘・手首の動きは毎回まったく同じではありません。毎回違う体の状態のなかで、微調整して同じ結果に落としている。 ベルンシュタインはこれを「反復なき反復」と呼びました。

上がり3ホールで崩れるのも、メンタルではなく物理です。 疲労するとカラダはしんどい横移動をサボり、その場の回転に頼りはじめます(強制スピナー化)。 横移動という土台を失った回転はフェース管理が難しく、プッシュアウトとチーピンという逆方向のミスが、同じ原因から出ます

POLICY やらないこと

研究所として、しないと決めていること。

NOT 01

感覚の言葉で説明しない

「もっとタメを作って」「腰を回して」は、レントゲンを撮らずにメスを入れるのと同じです。 指摘は必ず、計測した数値と紐づけて行います。

NOT 02

数値が揃っただけで合格にしない

ドライバーの入射角が+5度でも、右に体重を残したまますくい上げて作られていれば不合格です。 数値そのものより、どう作られたかを見ます。

NOT 03

体格やタイプで基準値を動かさない

適正レンジが変わるのはクラブ(ドライバー/アイアン)によってであり、 人によってではありません。動かすのは処方のほうです。

まず、あなたの飛び代がどこに眠っているかを知る。

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